Introduction.

「私が…魔法少女?」


少女の名前は、御館(おんたち)らせつ。
私立八鳴(やつなり)学院初等部に通う4年生。
人より少し恥ずかしがり屋な、心優しい10歳の少女。

ある日の夕暮れ。
いつものように帰路につく彼女を、ふと違和感が襲った。
いつものように歩く周りの人々。
いつものように暮れる夕日。いつものように流れる時間。
それでも少女は感じ取り、違和感は確信へと変わる。

これは、「いつものよう」ではない、と。

突如、人々が、夕日が、時間が静止した世界の中で、
らせつの目に前に現れたのは、犬のような巨大な怪物。
そして、それと懸命に戦う不思議な小人だった。
らせつに気が付いた小人は、怪物から彼女を庇い、傷付いてしまう。
激しい衝突の末に怪物は虚空に消え、
らせつは傷ついた小人を連れ帰り、介抱した。

意識を取り戻した小人――セッカは、この世界に迫る危機を語った。
異世界の魔法の結晶「魔力石」が暴走し、この世界にやってきたこと。
魔力石は魔獣と呼ばれる怪物を生み出し、災厄をもたらすこと。
セッカには、もう魔力石を集められるほどの力が残っていないこと。

――そして、セッカが見えるらせつには、魔法の資質があること。


「お願いです!魔法少女になって、
力を貸してください!!」


大切な街を、家族を、友達を守りたい。
羞恥の心を封じ込め、想いと願いを決意に変えて、
少女は魔法をまとい変身する。
魔法少女「ラクシャルらせつ」へと。


「みんなを守れる力…
それが、私にあるのなら…!
マジカル、メタモル…!
ラクシャーサッ!!」