キィィッ……――



閉まる扉の軋む音が、ちょっとだけ、耳に入った。
バタンという音とともに、私は薄暗い世界に、一人取り残された。
でも……


(終わ…った……)


今は、一人でいることが、独りでいられることが、どうしようもなく愛しい……







乱暴に弄られた乳首[ピアス]がジンジンする。
繋がれたままだった左手が、
手枷で擦り切れ血がにじむ。
顔に、胸に、体にまとわり付く白濁が、
独特の青臭さを放って、鼻の奥まで犯してゆく。


ゴプッ――


(ぁ……)


股の間に広がる、生ぬるい温かさ。
私の意思と関係なく、犯されて弛緩した膣が、
注ぎ込まれた精液を吐き出したんだ。
太ももを伝う感触……
それは間違いなく、私が穢れた証。そして……



私が、堕ちかけた証。



突然この薄暗い部屋につれてこられて、鎖で繋がれたあの日から、何度も何度も、繰り返される陵辱。
何人もの男の人の“それ”を受け入れるうちに、私の身体は変わっていってしまった。


……ううん。変わっていったんじゃない。
元に戻っていったんだ
女から、ただの雌へと……


手に握らされたペニスの熱さに、
口に捻じ込まれたペニスの臭いに、

私は、この身体は……
私の秘所は……濡れてた。興奮してた。


私の中の[ほんのう]が……男を、雄を、
自分から求めたんだ……
望んでたんだ…!犯されることを!穢されることを!!



クチュっ、ぴちゃ…――


「ん……はっ、ぁ……くぅ、ん…!」


枷のされていない自由な右手が、私の、大切な場所に触れる。
中指、薬指、そして、人差し指……
私の雌が、雄の温もりを求めて押し入ってくる……


「ふぁ…!ぁ、ぁっく……ん、はっ…はぁ……んぅぅ!」


ピチャ、グチュ、にちゃぁ――


ゆび……三本、も、……入って、る…
さっき、
せっかく……精液、ひり出したのに……塗ってる。自分で塗りこんでるぅ……
はしたない……はしたないよぉ……

私……
指も、アソコも……ぜんぶ…ぜんぶ犯されてる…!


「あっ、ぁ!……はっ、い、…ん……い、い…イイ、ですっ!」


グチャッぐっちゃ、ニチュ、ピチュン――


頬から漂う、むせ返るような精臭……
その臭いを胸いっぱいに吸って、教えられた“台詞”を口にする。
今はいない、この白濁の、主たちに向かって……


「イイです!気持ちイイですっ!!
あそこ……オマンコ!オマンコ指で掻き混ぜて!精子塗りたくるの!
気持ちいいんですっ!!!
だからっ!だからイかせて!?イかせてっ!!イかせて下さいぃッ!!!」



思いつく限りの、卑猥な言葉……
こんな言葉を口にするのは、こんな淫らなのは、私じゃない。
……私じゃない、もう一人の私。

『雌の私』……

そう……そうだ。
彼女に頼めば、彼女に任せれば、忘れられる。
全部……忘れられるんだ。


………お願い!忘れさせて…!!
この気持ちを…怖いのを!全部、全部忘れさせてっ!!


「いぃ!んっ、ぁ、ぁあぁぁ゛あ!ぁぁぁあ゛ぁぁっ!!」



ビクンッ!ビクッ、ビクンッ!!――



秘裂の上、むき出しの肉の芽を捻り潰した瞬間、私の中で、私を縛っていた“理性[なにか]”が、真っ白に、弾けた。



□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□



キィィッ――

開かれる扉と、微かに這入る鈍い光。
そして、近づいてくる靴音……

また、始まる……始まるんだ。
人形のように、玩具のように、もてあそばれるんだ……


次は何人?

次は何時間?

次は何回イかせるの?

次は何回イかされるの?




怖い……
怖いよ。

いっぱいの人に囲まれて……知らない人に無理やりキスされて。胸にピアスされて!
お口にも、お尻にも、……大事なところ、にも、おちんちん挿入れられて!
オモチャみたいに扱われて!!いっぱい犯されて!いっぱい汚されて!!
怖いの……怖いのっ!!



「っぅ、っく、……ぃよ…怖、いよぉ……」



目頭が熱い。頬を伝う温かい水が、精液と交じり合って、流れて落ちる。


……まだ、泣けるんだ。


カラカラになった喉から、汚濁の青い臭いがこみ上げてくるのに。
身体も、心も、こんなに汚されたのに。
私、まだ……泣けるんだ。


泣ける余裕が、まだあったんだ。


だから、辛いんだ……
辛いから、我慢してるから、涙が出るんだ。
だったら……


(もう……良いよね?)


……良いよね?
耐えなくても……
頑張らなくても、良いよね?
もう一人の私を……受け入れてもいいよね?



ジャリン――

手枷に繋がれた鎖が鳴る。
涙はもう止まっていた。

高みから私を見下ろす、いくつもの人影。
……私の、
ご主人様たち。


ゆっくりと起き上がり、跪き、愛しい方に尽くすと誓う。
帰ってきたのは問いかけ一つ


『どうされたい?』


だから……

「お願いします……」

私を――

[こわ]して……、下さい……」




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